脱中国! チャイナリスク+アルファ

中国国内で外国企業が中国で経済活動を行う際に、人件費の上昇、価格下落、代金回収問題、人民元切り上げ問題、中国の環境問題、反日感情にまつわる不買・労働放棄の問題等のチャイナリスクに気付いて、それを回避するためのリスクマネジメントの方法の一つとして、他の新興国においても投資を行い、リスクを分散化する考え方です。

チャイナリスクが顕在化し始めた昨今、中国景気の減速も追い打ちをかけ、日本だけでなく諸外国も中国から撤退中です。市場としての中国の魅力はありますが、世界が中国を工場にした時代は終わり、東南アジア諸国連合(ASEAN)へ移りつつあります。

その分散先も【チャイナ+1】から【チャイナ+アルファ】の時代へ

中国はもう魅力なし!?ユニクロ、無印はなぜ撤退を始めたのか?

 日本企業による東南アジア諸国連合(ASEAN)向け投資が急増している。2012年4~6月には前年同期比4割増の3800億円に達し、中国向け投資(3000億円)を上回った。チャイナ・リスクに積極的に対処するためである。

 11年の日本からASEANへの直接投資は前年の2.4倍となる1.5兆円に増え、中国(1兆円)を2年連続で上回った。直近の12年7~9月も1800億円と中国(1500億円)を上回っている。

ミャンマー

 08年以降の、ミャンマーの民主化を受けて、進出を検討する日本企業の動きが強まっている。人件費の安さに加え、約6200万人の人口を抱え、東南アジア有数の消費市場として期待されているのだ。人件費の高騰や、人民元切り上げなどのリスクが高まっている中国の機能を補完する「チャイナ・プラス1」の候補地として注目が集まっている。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査では、11年のミャンマーの人件費は月平均約95ドル(約7600円)で、中国の5分の1程度。人件費の高騰が続く中国をはじめ、アジア諸国から生産拠点をシフトしようとする動きが目立つ。

 9月にヤンゴンに開発拠点を設けるNTTデータは、当初50人を現地採用。5年後に500人に増員する予定で、「優秀な人材も増えている」と期待する。タイの洪水で工場が被災したパイオニアも、リスク回避とコスト削減のため、ミャンマーに生産拠点の開設を検討している。

 カジュアル衣料「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、中国に代わる生産拠点としてバングラデシュを有望視してきたが、「大規模生産は難しい」(柳井正会長兼社長)とミャンマーにシフトする。来年にも縫製工場を設ける方向だ。

 経済成長で中間所得層が増えるとみられ、「一大消費市場」としての将来性に注目する企業も多い。

 クボタは、ミャンマーがコメを食べる農業国である点に目を付けた。「経済成長で農村部の人口が減り、農業の機械化ニーズが進む」とみて、農機輸出を計画する。伊藤園は、ご飯に合う「お~いお茶」など清涼飲料を売り込もうと、生産、販売拠点を設ける。中間所得層の増加を見込み、ローソンも大手コンビニに先駆け、1号店を出す計画だ。

 かつてミャンマーに持っていた拠点を復活させる企業もある。味の素は00年まで、隣国タイから材料を輸入し、「味の素」を製造販売していた。軍事政権下で輸入できなくなり、拠点を休眠状態にしていたが、「近く再開したい」(伊藤雅俊社長)という。

 スズキはミャンマー政府との合弁で、隣国タイから部品を運び、小型車や二輪車を組み立てて年間数百台を生産していたが、10年に契約が終了。現在、再び合弁会社を設立する方向で調整中だ。

 こうした動きをバックアップする態勢も整いつつある。全日本空輸は10月15日、12年ぶりにミャンマー線(成田-ヤンゴン線)直行便を再開した。週3往復運航する。ANAの伊東信一郎社長は「ビジネスだけでなく文化&観光面での架け橋になりたい」と述べた。また、進出を目指す日本企業に情報を提供するため、みずほコーポレート銀行が拠点を新設するなど、金融機関も支援ビジネスに力を入れる。

ベトナム

 SGホールディングスグループで国際物流事業を展開する佐川グローバルロジスティクスは12年2月、ベトナムの現地子会社、佐川急便ベトナム有限会社が新たに宅配便事業を開始すると発表した。

 佐川急便ベトナムは97年からベトナム全土を縦断する貸し切り便を主としたトラック輸送サービスを展開していたが、北部の首都ハノイ市、南部の商都・ホーチミン市で宅配便事業を開始する。日系の物流企業がベトナムで宅配便事業を始めるのは初めて。経済発展の著しいベトナムにおいて、日本同様の高い品質の物流サービスを提供する。

 12年1~10月の日本企業のベトナムへの進出件数が過去最多を更新した。ベトナム外国投資庁が10月25日に発表したリポートによると、1~10月期の日本企業の新規投資件数(認可ベース)は前年同期比39%増の225件に上った。これまで最も多かった11年の年間件数(208件)を1~10月で上回った。製造業が多く、中国からの工場移転組が目立つ。

 新規投資額は同4.2倍の38億7500万ドル(約3100億円)。ブリヂストンのラジアルタイヤ工場やLIXILグループ(旧住生活グループ)のアルミサッシ工場など数100億円単位の投資が相次いだ。

 サントリーホールディングスは米飲料大手、ペプシコのベトナム現地法人に51%出資し、同国の飲料市場に進出する。ベトナムへの進出をテコにペプシコとの関係を生かし、東南アジア市場を開拓。15年に同地域での売り上げを、11年の5倍の1000億円に引き上げる。

 サントリーは13年春にもペプシコの現地法人に出資。食品事業を切り離した後、現地法人の名称を「サントリーペプシコ ベトナムビバレッジ」(ホーチミン市)に変更する。出資額は200億円。飲料専業となる現法は「ペプシコ」ブランドの炭酸飲料やミネラルウオーターを販売し、将来は「サントリー」ブランドのお茶やコーヒー飲料も売る計画だ。

 ベトナムは政府主導で市場経済化を進めており、外資企業の輸出拡大に牽引されて高い経済成長を続けている。また「チャイナ・プラス1」の筆頭候補ともみられている。最近では、個人消費を中心とする内需も拡大しつつある。日本企業のベトナムへの関心も高く、中国、タイ、インドネシアと並びアジアの重要な生産拠点になるとの見方が多い。



『現在、欧米や日本の既製服のほとんどが中国製であり、高級ブランドも例外ではない。中国ではサプライチェーンの末端に位置する労働集約型産業ではあるが、労働者は豊富だった。しかし近年、日本企業が中国での生産から相次いで撤退する動きが目立ち始めている。

 洋服の青山を展開する青山商事や「無印良品」の良品計画が中国での生産の大幅な縮小を発表している。現在、青山商事の中国生産比率は75%、良品計画は60%で、2社とも3年後には50%まで下げる予定だ。青山商事はすでにベトナム、ミャンマー、カンボジアでの拠点を確立、今年中にインドネシアでも委託生産を開始予定で、生地はこれまでどおりイタリアと中国で生産するが、縫製は東南アジアに移す予定だ。

 一方、良品計画も229の協力工場を86にまで減らし、家具や日用雑貨は東南アジアの木材産地で直接生産する。また、「ユニクロ」を展開するファーストリテイングも、中国以外での生産規模を拡大している。

 日本企業が生産拠点としての中国から撤退する理由は、上昇を続ける労働コストだ。ここ数年、中国の労働コストは倍以上に上昇し、人民元も上昇し続けている。1990年代の終わりの円高期に廉価な労働コストに目をつけた日本企業が、人件費の上昇にともなって撤退するのは当然のことだ。

 問題は人件費の問題で企業が撤退した後、誰が労働者に新たな就業先を提供するかということだ。撤退が労働者の就職に影響を与えるならば、賃上げも意味がなくなってしまうだろう』

タイ

 12年7月10日、ユニチカの樹脂(プラスチック)工場がタイ東南部ラヨン県の工業団地で稼働した。工場長は“タイ人気質”を「基本は笑顔。タイの人たちは常にほほえんでいるので、こちらも自然と笑顔になる」と述べた。

 ユニチカがタイの新工場建設を表明したのは今年2月。同社のタイ国内の不織布工場(パトゥムタニ県)が水浸しになり、まだ復旧作業中だった。

 最近は、人件費の安いミャンマーやカンボジアなどタイの近隣国が日系企業の投資先としてクローズアップされてきた。洪水被害で「カントリー・リスク」が上昇したことに加え人件費が年々上昇し、生産コストの抑制面では、近隣のアジア諸国の方が有利だからだ。

 タイは進出企業に対し法人税の8年免除などの誘致促進策を展開している。各国政府もさまざまな企業誘致策を打ち出しており、条件面の差は徐々に縮まりつつある。

 生産量の約6割をタイでまかなっていた日本電産は、リスク分散のためカンボジアとマレーシアに新工場を建てた。ただ、インフラ面の整備ではタイが圧倒的に進んでおり、工業団地は50を超す。ユニチカの担当者は「化学品を扱うメーカーにとって、電力の安定供給は最も重要な要素。タイは大停電がほとんどなく安心できる」と打ち明ける。ミャンマーやカンボジア、ラオスなど近隣国では、電力の供給が需要に追いついておらず、「停電が日常茶飯事」の国・地域もある。

 ホンダはタイの被災工場を3月に復旧し、インラック首相を迎えて盛大な生産再開の式典を催した。三菱自動車などもタイで小型車の生産に乗り出す。

 タイ人はけんかを好まず、あまり文句を言わない。中国人はその反対だ。半面、タイ人は、おおらかな国民性からか、要領をつかむとルールを厳守しなくなる。タイ人と並んで親日的とされるベトナム人は、「タイ人よりきちょうめんだが、融通が利かない面もある」といわれている。タイは東南アジア随一の「ものづくり立国」である。自動車関連産業の集積ぶりは「アジアのデトロイト」と呼ばれるほどだ。全生産台数の9割以上は日系メーカーが占めるなど、日本が主導的役割を果たしてきた。しばらくタイの優位性は揺るぎそうにない。ちなみに、タイ国内の12年の新車販売台数は130万台と前年より6割増える見込み。

バングラデシュ

 中堅電子部品のタムラ製作所はバングラデシュで電子部品の生産を始める。日本やアジア、欧州向けの産業機器用電子部品の生産の一部を近くバングラデシュに移管する。中国への一極集中リスクを回避する狙いもある。

 タムラ製作所の子会社で発光ダイオードを手掛ける光波(東京・練馬)のバングラデシュの生産子会社、オプシード(チッタゴン市)に5億円を投資する。中国で作っていたもののうち輸出向けの一部をバングラディッシュに移す。

 以上のように、日本のグローバル化も新たな局面を迎えている。こうした世間の動きを敏感に読みとって、次の一手を見定める必要がありそうだ。
Business Journal 2012/10/29




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